宅建試験の権利関係で出題される無効取消部分の民法改正のまとめ 後半
こんにちは、編集長Sです。
前回に引き続き宅建試験の権利関係で出題される無効取消部分の民法改正のまとめです。
取り消すことができる行為の追認(民法122条)
改正後の条文です。
(取り消すことができる行為の追認)
第122条
取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
何が改正されたんか、不思議に思う方もいるかもしれません。
民法122条は、ただし書きが削除されました。
ちなみに、削除された「ただし書き」は次のようなものでした。
『追認によって第三者の権利を害することはできない』
このように規定されていたのですが、取消すことができる法律行為が追認されると、第三者にはじめから望んでいた法律行為の効果が発生するので不利益が生じることは想定できません。
そこで、民法122条のただし書きは無意味であったのではないということが以前から指摘されていました。
そこで、今回の改正で削除されました。
追認の要件(民法124条)
改正後の条文です。
(追認の要件)
第124条
1 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
2 次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。
一 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
二 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
民法124条1項について
確立された判例や学説では、以前から追認するためには、取消の原因となっている状況が消滅しており、取消権があることを知っていないと追認したと認めることができないとされていました。
これは、追認行為が、取消できる行為についてその取消権を放棄して法律行為を確定させる重要な行為であるということを理由にしています。
取消しの原因となっていた状況が消滅しで想定しているのは、詐欺や強迫の状況が消滅していない場合です。
このようなときに、追認しても表意者を保護することができないので、何のために民法で規定したのかわからなくなってしまうからです。
また、『取消権を有することを知っていないといけない』ということについても、民法が表意者を保護することを目的にこのような制度を作ったのの無意味なものとなる事を防止するためです。
民法124条2項について
1項の取消の原因となっている状況が消滅していなくても、取消権があることを知らないくても次の場合は追認することができます。
①法定代理人・保佐人・補助人が追認をする場合
②制限行為能力者(成年被後見人を除く)が法定代理人・保佐人・補助人の同意を得て追認をする場合
これらの場合は、追認を判断する人がしっかりとしているので問題ないとの判断がなされているためです。
法定追認(民法125条)
改正後の条文です。
(法定追認)
第125条
追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。一 全部又は一部の履行
二 履行の請求
三 更改
四 担保の供与
五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
六 強制執行
1号~6号については、変更はありません
民法125条の改正点は、『前条の規定により』を削除するものです。
この文言だ削除されたのは、民法124条1項に『取消権を有することを知った』後にの文言だ追加されたためです。
というのも、従来から民法125条の法定追認の場合は、取消権があることを知らなくても追認有効とされていました。
そのため、従来からの取り扱いのままとするために、すなわち取消権を有することを知った後でなくても法定追認できるようにするために改正されました。
おまけ
条件及び期限について
条件成就の妨害等(民法130条)
改正後の条文です。
(条件の成就の妨害等)
第130条
1 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
2 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。
条件及び期限については、民法130条2項が追加された以外は、改正がありませんでした。
そこで、ここで一緒に解説しておきます。
以前の条文には2項はありませんでした。
ですが、確立された判例では、条件が成就することによって利益を受ける者が、不正にその条件を成就させた場合は、相手方は条件が成就しなかったものとみなすことができるとされていました。
今回の改正で、確立された判例を明文化したものです。
無効及び取消に関する今回の民法の改正については以上です。
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