宅建試験の権利関係で出題される時効分野の民法改正まとめ part2
こんにちは、編集長Sです。
早速、前回の続きの権利関係で出題される時効分野の民法改正についてまとめていこうと思います。
頑張っていきましょう!
催告による時効に完成猶予(民法150条)
改正条文は次のようになります。
(催告による時効の完成猶予)
第150条
1.催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2.催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
民法150条1項について
民法150条1項は、催告があったときは、6か月経過するまでは時効が完成しないと規定しています。
ここで催告は裁判外の請求です。
これまでの扱いもこの条文と同様の扱いでした。
民法150条2項について
民法150条2項は、催告の後で再度催告をした場合の取扱いについて定めています。
この場合は、時効の完成猶予の扱いはされません。
簡単にいうと、催告を繰り返しても時効の完成猶予に関しては無意味であることを示しています。
どうすればいいのか?
これも従来からの扱いと同様で、催告をした後は、6か月以内に裁判上の請求等がなされなければ、時効の完成猶予は認められないのです。
協議を行う旨の合意による時効の完成猶予(民法151条)
改正条文は次の通りです。
第151条
1.権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2.前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3.催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4.第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
5.前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。
改正前では協議を行う旨の合意に時効の完成させない効果を認めるといった規定はされていませんでした。
そのため、当事者が協議をしている途中で時効の完成時期が近付いてくると時効が完成してしまわないように裁判上の請求等を行う必要がありました。
協議の当事者としては、今話し合っているのに裁判上の請求を別途しないといけないというのはどうなんの?といったものでした。
そこで、今回の改正で当事者が協議を行い書面で合意が得れられた場合には、当事者が定めた協議期間は時効の完成猶予がされる(時効が完成しない)こととしました。
民法151条2項から5項について
民法151条2項は、『協議を行う旨の合意』におる時効の完成猶予は、再度行いことができると定めています。
ただし、最長で5年とされました。
民法151条3項は、催告による(民法150条)時効の完成猶予期間中にされた「協議を行う旨の合意」については、時効の完成猶予の効力がないことが明示しています。
民法151条4項は、1項の書面による合意が、電磁的記録による場合であっても、書面によってされたものとみなすことを定めています。
民法151条5項は、1項3号の協議の続行を拒絶する旨の通知が電磁的記録によってされた場合について、書面によってされたものとみなすことを定めています。
民法151条4項・5項のように、電磁的記録でなされたものを書面とみなすとわざわざ規定していないといけないなんて面倒のようですが、きちんと定めておかないと後から問題になった逆に面倒なので、ここで定めている感じですね。
承認による時効の更新(民法152条)
改正条文は次のものとなります。
(承認による時効の更新)
第152条
1.時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2.前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
民法152条は新たに加えられた条文です。
新たに新設されたものとはいっても内容は、改正前の157条や156条に規定されていたものを規定したもので、実質的な変更はありません。
時効の更新は、新たに時効の期間が開始するというものです。
時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲(民法153条・154条)
改正条文は次のようになっています。
(時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲)
第153条
1. 第百四十七条又は第百四十八条の規定による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
2.第百四十九条から第百五十一条までの規定による時効の完成猶予は、完成猶予の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
3.前条の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。第154条
第百四十八条第一項各号又は第百四十九条各号に掲げる事由に係る手続は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、第百四十八条又は第百四十九条の規定による時効の完成猶予又は更新の効力を生じない。
改正民法153条は、以前の民法148条が時効の中断の効力は当事者及び承継人の間においてのみ効力が生じるとされていたものの趣旨をそのまま引き継いだものです。
何についの効力かについてか
では何についての効力なのか見ていきましょう。
1項は、民法147条と148条で規定している『時効の完成猶予又は更新』について
2項は、民法149条~151条の『時効の完成猶予』について
3項は、民法152条の承認による『時効の更新』について
効力の及ぶ範囲はどの項も「当事者及びその承継人」としています。
天災等による時効の完成猶予(民法161条)
改正条文は次のようになっています。
(天災等による時効の完成猶予)
第161条
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第百四十七条第一項各号又は第百四十八条第一項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
民法161条の改正は、地味ですが結構重要です。
何が変わったかというと、『時効の完成猶予』や『時効の更新』の言葉を修正したものと天災等の場合の時効完成猶予期間が3か月に変更されました。
天災等があった場合に以前は2週間の時効停止がされるだけでいたが、2週間では短すぎるということから3か月に大幅に拡張されました。
今回はこの辺で、次回は消滅時効についての改正について見ていきます。
消滅時効に関する改正はこちらです。 |