宅建試験の権利関係で出題される相続分野の民法改正まとめ part7

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宅建士試験対策

宅建試験の権利関係で出題される相続分野の民法改正まとめ part7

こんにちは、編集長Sです。

今回は、宅建試験の権利関係で出題される相続分野の民法改正part7をしていきたいと思います。

今回は配偶者短期居住権についてです。

民法の学習は条文をもとに学んでいった方が後々の学習(ほかの資格を取る場合にも役立つとの思いから)にもつながる考えのもと、条文を出して解説しています。

とはいえ、条文を読むのに慣れていない方には難しく感じるかもしれません。

事実、多くの宅建のテキストでは条文を載せているこをあまり見ないと思います。

そこで、一通り解説が終わったら、もう少し解り易く必要な部分だけの解説をしたいと思います。

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配偶者短期居住権(民法1037条)

改正条文です。

(配偶者短期居住権)
第1037条
1 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第891条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合:遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合:第3項の申入れの日から六箇月を経過する日
2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。

配偶者短期居住権と配偶者居住権は異なります。

どう違うかというと、相続が起こると、遺産分割までの間に結構時間がかかる場合があります。

その間、相続財産である建物に住んでいた被相続人の配偶者はどうすればいいのか?

配偶者が被相続人の所有する建物の相続開始時に無償で居住している場合にその建物に引き続き住むことができるというものです。

ただし、配偶者居住権が成立するまでの期間限定のものです。

相続が起きてからの権利の発生の順番を示すと①相続開始、②配偶者短期居住権発生、③遺産分割等が行われ各財産の帰属が決定、④配偶者居住権が発生という順番になります。

厳密にいうと③と④はどんど同時です。

配偶者短期居住権の存続期間は、遺産分割をすべき場合には、遺産分割により居住建物の帰属が決定した日又は相続開始のときから6か月を経過する日のいずれか遅い方です(民法1037条1項1号)。

どういう事かというと、相続開始から6か月経っても遺産分割が決定できていなくて居住建物の帰属の決定がされていない場合は、居住建物の帰属が決定するまでは、配偶者短期居住権は続きます。

また、相続開始から6か月経つ前に、遺産分割が決まり居住建物の帰属が決定された場合は、相続開始から6か月経過するまではその建物に住み続けることができます。

配偶者短期居住権は、最低6か月間は認められるということになります。

配偶者短期居住権が生じた場合に、建物所有者がその建物を第三者に譲渡してしまうことが考えられます。

この場合にどうすれなるのかについて規定しているのが民法1037条2項です。

すなわち、配偶者短期居住権が生じたときにその建物を第三者に譲渡するなどして、配偶者短期居住権を妨害してはいけないと規定されています。

配偶者による使用(民法1038条)

改正条文です。

(配偶者による使用)
第1038条
1 配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない。
2 配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。
3 配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。

この規定は、配偶者居住権の配偶者による使用(民法1032条)の規定とほぼ同じです。

とはいえ、若干違いがあります。

どこが違うのか?

配偶者居住権のほうの民法1032条1項ただし書きが民法1038条にはありません。

つまり、建物の一部が店舗であった場合などでは、店舗部分は配偶者短期居住権では使用することができません

その他は、善管注意義務を負うことは配偶者居住権と同じです。

また、居住建物の取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物を使用させることができません(民法1038条2項)。

これに違反した場合には、居住建物取得者は、配偶者短期居住権を取得した配偶者に意思表示することによって、配偶者短期居住権を消滅させることができます(民法1038条3項)。

配偶者居住権の取得による配偶者短期居住権の消滅(民法1039条)

改正条文です。

(配偶者居住権の取得による配偶者短期居住権の消滅)
第1039条
配偶者が居住建物に係る配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は、消滅する。

この規定は、配偶者が配偶者居住権を取得した場合、配偶者短期居住権は消滅します。

このことからわかるように、配偶者居住権と配偶者短期居住権は両方同時に成立することはありません

はじめの方で説明したように、配偶者短期居住権⇒配偶者居住権の順で一般的には生じてきます。

配偶者短期居住権と配偶者居住権をしっかりと区別してください。

居住建物の返還等(民法1040条)

改正条文です。

(居住建物の返還等)
第1040条
1 配偶者は、前条に規定する場合を除き、配偶者短期居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物取得者は、配偶者短期居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
2 第599条第1項及び第2項並びに第621条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。

この規定は、配偶者居住権規定であって民法1035条ほぼ同様な規定内容となっています。

使用貸借等の規定の準用(民法1041条)

改正条文です。

(使用貸借等の規定の準用)
第1041条
第597条第3項、第600条、第616条の2、第1032条第2項、第1033条及び第1034条の規定は、配偶者短期居住権について準用する。

いろいろと準用していますが、特に注意する点としては、配偶者短期居住権も譲渡することができません(民法1032条2項の準用)。

条文の見出しにも有るように、使用貸借と性質が似ているということを押さえておいてください。

それでは今日はこのへんで終わります。

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