宅建試験の過去問の解き方実戦対策(権利関係)第2回意思表示 平成27年問2
こんにちは、編集長Sです。
今回は、宅建試験過去問の平成27年問2を題材にして、意思表示の問題の解き方について確認していきたいと思います。
まずは問題を見てみましょう
宅建試験 平成27年問2
一般社団法人 不動産適正取引機構から引用
宅建試験平成27年問2は、事例問題です。
事例問題は、どのように解いていけばいいのでしょう?
まずは、問題文の事例の関係図を問題文の空白部分にかくことから始まります。
そうすると次のようになります。
今回は説明のために『仮装売買契約』と書いていますが、特に書かなくても自分で解ればどんな図でも大丈夫です。
甲土地は、土地なので□で表しました。
次に確認するのは、正しいものを選ぶのか誤っているものを選ぶのかの確認です。
今回は、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれかとなっているので、『誤っているもの』の部分に×印をつけておきましょう。
『×』の選択肢を選ぶという意味です
問題文にも「Bと通謀して」とあるので、この問題は通謀虚偽表示の問題であることがわかりますね。
さらに、問題文の最後の方に「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とするとあります。
ここからも、通謀虚偽表示の問題であることがわかると思います。
選択肢の検討
問題文の確認が終わったら次は、選択肢の検討に移ります。
選択肢は、文字が少ないものから読んでいきましょう。
宅建試験過去問の平成27年の問2では、選択肢の番号でいえば3、4、1、2の順で短いですね。
厳密にどの選択肢が短いかを判断しなくても読みやすいものから検討していっても大丈夫です。
ここでは、3、4、1、2の順で検討していきます。
平成27年問2選択肢3
選択肢3は、次のようになっていますね。
Bの債権者である善意のCが、甲土地を差し押さえた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
通謀虚偽表示は原則無効(民法94条1項)で、ただし、善意の第三者に無効を対抗できません(民法94条2項)。
問題となるのは、無効を対抗できない『善意の第三者』とは誰を指すのかです。
善意については、問題文にもあるように「虚偽表示の事実」についてですね。
そして、『善意』とは『知らない』こと、『悪意』とは『知っている』ことをさしのでした。
次に問題となるのが、第三者の定義です。
「第三者」とは、虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって、その表示の目的について法律上利害関係を有するに至った者を言います。
これは、民法の条文には書かれていない、判例上確立した定義です。
一般承継人とは、相続人などのことを指します。
この反対に特定承継人とは、売買などにより権利等を承継した者を指します。
そして、表示の目的について法律上の利害関係を有するに至る必要が有ります。
今回の場合は、『甲土地』が表示の目的ですね。
さらに、『法律上の利害関係を有するに至る』必要が有ります。
選択肢3では、Bの債権者Cが善意で、甲土地を差し押さえています。
債権者Cは、当事者でも一般承継人でもありません。
また、『甲土地を差し押さえている』ので、表示の目的となっている『甲土地』を対象としています。
『差押えている』ので、法律上の利害関係を有するに至っています。
したがって、AはCに売買契約の無効を主張することはできません。
選択肢3は正しい(〇の)選択肢となります。
平成27年問2選択肢4
選択肢4は、次のようになっていますね。
甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。
選択肢4は、通謀虚偽表示者と直接取引をしたもんでなければ、善意の第三者とならないのかどうかを問う問題ですね。
直接の取引相手が悪意であっても、転得者が善意であれば善意の第三者として保護されます。
ちなみに、取引の相手方が①「悪意」⇒②「善意」⇒③「悪意」と権利が移転していった場合は③の人は保護されるのでしょうか?
この場合は、判例は絶対的構成をとります。
すなわち、一度善意の者が現れたら絶対的に所有権が移転しその後に悪意の者が出てきてもその悪意者は保護されることになります。
これは、取引の安全を図る趣旨と悪意者から善意者が担保責任を追及されることが無いようにするためです。
ということで、この選択肢4は善意のDにはAは売買契約の無効を主張できないことになります。
したがって、正しい(〇の)選択肢となります。
平成27年問2選択肢1
選択肢1は次のようになっていますね。
善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
この問題は、通謀虚偽表示で保護されるのに登記が必要否かを問う問題です。
通謀虚偽表示は、土地の売買に限らず、権利などを仮装譲渡した場合に適用されます。
対象物は甲土地であっても通謀虚偽表示をした本人と善意の第三者として保護される相手方との関係は、善意の第三者として保護されるか否かの判断には登記は不要とされています(判例)。
したがって、AはCに対して、Cが未だ登記を備えていなくても虚偽の売買契約の無効を主張することはできません。
ということで1は、正しい(〇の)選択肢ということになります。
ここまで、検討してきて、3,4,1と正しい(〇の)選択肢であったので、答えとなる誤っている(×の)選択肢は2ということになります。
実際の試験では、答えが確定したので、ここまでの検討で次の問題に進んでもいいのですが、ここでは一応選択肢2についても検討して言いましょう。
平成27年問2選択肢2
選択肢2は次のようになっていますね。
善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
選択肢2では、甲土地ではなく乙建物が新たに出てきています。
Bが甲土地上に乙建物を建てていますね。
そして、その乙建物をCに賃貸しています。
これは少し難しいように感じますね。
ですが、選択肢3を検討したときに、虚偽表示の目的物は『甲土地』であると確定しました。
また、土地と建物はそれぞれ別個のものとして扱われます。
ということは、甲土地上の乙建物は別の目的物ということになります。
判例でも、通謀虚偽表示の目的となった土地の上に建てた建物は、通謀虚偽表示の目的に含まれないとしています。
したがって、AはCに対して通謀虚偽表示で土地の売買契約は無効だから土地を返せと主張することができます。
このことから、2は誤り(×の)選択肢となります。
まとめ
今回は、宅建試験過去問平成27年問2を実戦ではどのように解くかについて見てきました。
まずは、何が問題となっているのかを確認して権利関係の問題では関係図をしっかりと書く、正しいのもを選ぶのか誤ったものを選ぶのかをチェックし、選択肢を検討していく。
この流れをしっかりとつかんでください。
それでは今回はこのへんで終わります。