宅建試験の権利関係で出題される相続分野の民法改正まとめ part8
こんにちは、編集長Sです。
今回は、宅建試験の権利間でいで出題される相続分野の民法改正part8ということで、遺留分について見ていきたいと思います。
遺留分についても今回の民法改正でかなり変わっていますのでしっかりと押さえてください。
遺留分については前半と後半に分けて解説していきます。
今回は前半です。
遺留分の帰属及びその割合(民法1042条)
改正条文です。
(遺留分の帰属及びその割合)
第1042条
1 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合:三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合:二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第900条及び第901条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
遺留分は、兄弟姉妹位階の相続人に認められます。
すなわち、配偶者、直系卑属(子供、孫など)、直系尊属(父母・祖父母など)です。
そして、割合は、配偶者・直系卑属(子・孫など)が1/2で、直系尊属(父母・祖父母など)が1/3です。
そして、子や孫、父母など複数人いれば、頭数で割ることになります。
遺留分算定に乗じる割合 | 遺留分財産(1043条) | 相続人の人数 | |
①直系尊属のみが相続人 | 1/3 | 相続時の財産+遺贈した財産-債務の全額 | 1/相続人の人数 |
①以外の者が相続人 | 1/2 | 相続時の財産+遺贈した財産-債務の全額 | 1/相続人の人数 |
遺留分を計算する(算定する)財産の価額については次条で定めています。
遺留分を算定するための財産の価額(民法1043条)
改正条文です。
(遺留分を算定するための財産の価額)
第1043条
1 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
被相続人が相続開始時のに有していた財産は、相続財産となるのが原則です。
その他に、贈与した財産も一定の条件のもとに相続財産として参入されます。
どこまでの、贈与が相続財産に参入されるかは、次条(民法1044条)で定められています。
民法1044条
改正条文です。
第1044条
1 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第904条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
相続開始前1年以内にしたものに限り、遺留分算定の基礎となる相続財産に参入されます。
例外的に、贈与の双方(贈与者と受贈者)が遺留分権利者に損害を与えることを知っていたときは、1年より前の者でも遺留分算定の基礎となる相続財産に加えられます。
ちなみに、この1年以内にしたものとは、契約を締結したことを指します。
例えば、贈与契約が2年前に成立していたのに、実際に財産が渡されたのが相続開始前6か月であったとしても、この贈与契約は遺留分算定の基礎となる財産には参入されません。
2項の民法904条の規定の準用については、贈与されたものが、すでに無くなっていても相続開始時に贈与されたものがあったとみなして計算することになるります。
3項は、相続人に対する贈与は1年ではなく、相続開始前の10年間が対象になることを規定しています。
つまり、1項の贈与には相続人に対する贈与は含まれていないことになります。
端的に、相続人の贈与の場合は10年間遡る、それ以外は1年間遡るということを覚えておきましょう。
また、相続人が贈与を受ける場合、被相続人と同居をしていた場合や面倒を見ていた場合など、日常生活を共にしている場合には、どこまでが贈与はっきりしない場合があります。
そのような場合について、贈与に参入しないとしているのが、『婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る』の部分です。
相続人への贈与はすべてが10年遡って遺留分に参入されるわけではないことを覚えておいてください。
民法1045条
改正条文です。
第1045条
1 負担付贈与がされた場合における第1043条第1項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
2 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。
改正前の条文では、負担付贈与の場合には、遺留分返還請求をされた場合一度すべてを返還し負担分を返還していました。
今回の改正で、負担付贈与の場合負担部分を控除して返還することになりました。
今回の改正では、遺留分権は遺留分権者が金銭債権を得ることになったということをおさえておいてください。
遺留分侵害額の請求(民法1046条)
改正条文です。
(遺留分侵害額の請求)
第1046条
1 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2 遺留分侵害額は、第1042条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第903条第一項に規定する贈与の価額
二 第900条から第902条まで、第903条及び第904条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第899条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額
この規定にあるように、遺留分権の行使は、今回の改正で、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することになりました。
この規定で、実際の遺留分侵害額が計算することになります。
具体的にどのような計算になるかというと、相続人が配偶者と子1人だった場合で、3000万円の自宅(土地と建物)現金2000万円の相続財産が有った場合で、自宅3000万円を配偶者に遺贈したとします。
子が遺留分侵害額請求権を行使した場合その額はいくらになるのか?
① 遺留分の総額を求める
(3000万円+2000万円)×1/2×1/2=1250万円
② 民法1046条2項1号(特別受益の額)
遺贈や贈与がないのでここは0円です
③ 遺留分権者が取得することになる具体的相続分の額(実際に相続する額)
(2000万円×1/2=1000万円
④ 遺留分権利者が承継する債務
今回は0円です。
⑤ 遺留分侵害額は250万円となります。
1250万円-1000万円=250万円
ちなみに、遺留分侵害額請求権は形成権となっています。
形成権とは、行使を一方的に意思表示することで、法律関係が変更されるものです。
今回はこの辺で終わります。