宅建試験の権利関係で出題される時効分野の民法改正まとめ part1
民法改正で時効の部分は後のように改正されたのかしら?
来年宅建試験を受けるから気になってるの。
こんにちは、編集長Sです。
今回は、宅建試験の権利関係で出題される時効分野の民法改正についてまとめていこうと思います。
結構の分量があるので、part1とておきます。
時効の援用(民法145条)
改正条文です。
(時効の援用)
第145条
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
民法145条は、かっこ書きが追加されました。
かっこ書きとは、条文内のカッコで囲まれた部分です。
この部分は、以前の条文では書かれていませんでした。
そのため、「当事者」とは誰を指すのかについて争われていました。
確立した判例では、民法145条のいう「当事者」とは、『権利の消滅により直接利益を受ける者」を指すとされています。
具体的には、保証人や物上保証人のほか、抵当不動産の第三取得者や売買予約の仮登記に遅れる抵当権者なども含まれます。
今回の改正では、この部分を明文化したものです。
裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新(民法147条)
改正条文です。
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第147条
1.次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停 四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2.前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
改正前の『時効の中断』と『時効の停止』は無くなりました。
以前の民法の勉強をしていた方は『えーーー!!』無くなったの!!
といった感想を持つと思います。
中断と停止の区別は結構面倒でいしたね。それが無くなりました。
無くたったといっても、考え方自体は残っています。
名前が変わったと思ってください。
どの様に変わったかというと、『時効の完成猶予』と『時効の更新』と名前を変えました。
法的効果の内容と合わせるようなネーミングとなって若干覚えやすくなったのかと思います。
時効の完成の猶予とは、猶予の間は時効が完成しないことです。
時効の更新とは、時効が新たに初めから進行を始めることです。
民法147条1項について
民法147条は時効の完成猶予を規定しています。
この規定では、裁判上の請求や支払督促等の事由が終了するまでの間は、時効は完成しないと規定いています。
つまり、裁判手続きが終了するまでは時効は完成しないということです。
民法147条2項について
民法147条2項は、時効の更新について定めています。
民法147条1項の規定を受けて、確定判決が出た場合にはその時から新たな時効期間が始まることを規定しています。
この規定は、みなさんもご存じの通りこれまで判例等で示されて言ことを明文化したものです。
強制執行等による時効の完成猶予及び更新(民法148条)
改正条文です。
(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)
第148条
1.次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
四 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続
2.前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。
民法148条1項について
民法148条1項は、民法147条の手続きに加えて競売等が行われた場合にも時効の完成猶予がされることが規定されています。
民法148条2項について
民法148条2項については、民法147条2項に他に強制執行等が行われた場合も時効の更新があることを規定しています。
ただし、申し立ての取り下げ等があった場合にはその限りではないと規定されています。
しっかりと、最後まで手続きを終わらせないと時効の更新は適用されないということです。
仮差押え等による時効の完成猶予(民法149条)
改正条文です。
(仮差押え等による時効の完成猶予)
第149条
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
一 仮差押え
二 仮処分
仮差押えと仮処分は、強制執行を保全する手続きであるので、債務名義が不要です。
債務名義が不要であることから、手続き終了時から6か月間は時効の完成が猶予されます。
ちなみに債務名義とは、強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書のことを言います。
強制執行を行う上で、必要となるものです。
具体的には、確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、和解調書・調停調書のことです。
時効の改正点はまだまだあるので今回はこの辺にしておきましょう。