宅建試験の権利関係で出題される相続分野の民法改正 まとめ part1
相続分野の改正はもう施行されているから、しっかりと理解しておきたいわ。
どうなってるのかしら?
こんにちは、編集長Sです。
今回から、宅建試験の権利関係で出題される相続分野の民法改正についてのまとめpart1を解説していきたいと思います。
改正の全体像についてはこちらを参照してください。 |
相続財産に関する費用(民法885条)
下の条文は、改正条文です。
(相続財産に関する費用)
第885条
相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。
改正以前では、2項がありました。
2項は、『前項の費用は、遺留分権者が贈与の減殺によって得た財産をもって支弁することを要しない。』と規定されていました。
しかし、この規定は当然のことを規定しているので、無意味ではないかとの指摘があり、削除されました。
共同相続における権利の承継の対抗要件(民法899条の2)
下の条文は、改正条文です。
(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
民法899条の2第1項について
相続分を超える部分を相続した場合は、登記等の対抗要件を備えていないと第三者に対抗できないことを明記しました。
この取り扱いは、以前からされていました。
というのも、債権者は、相続分は計算できても、相続分を超える部分を相続するというようなものは、遺産分割協議等を経なければなりません。
債権者は、いつ遺産分割が行われたか明確ではないので、債権者の保護のために法定相続分以上を相続する場合は第三者対抗要件を備えていないと債権者に対抗できないとして、債権者を保護するものです。
民法899条の2第2項について
民法899条の2項については、被相続人の債務者についての規定と言えます。
被相続人(亡くなった人)の債務者は、遺産分割により誰に弁済しないといけないかが決定されます。
そして、誰が債権者なのかは、本来なら、相続人全員から債務者に通知しないといけません。
しかし、それでは手続きが煩雑になり、債務者は誰に弁済したらいいのか分からなき状態が生じてしまいます。
そこで、受益相続人(債権者となった相続人)が単独で債務者に通知すれば、共同相続人全員が通知した場合と同様の効果を認め、債務者や第三者に対抗できるとしました。
注意すべきは、遺言の内容を明らかにして通知しないといけないということです。
そうしないと、ほんとは相続していないのに相続したとして通知するのことがあるのでその防止のためです。
遺言による相続分の指定(民法902条)
下の条文は改正条文です。
(遺言による相続分の指定)
第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。
改正民法では、遺留分減殺請求権が単に遺留分侵害額に相当する金銭請求権が請求権者に生じるとされました。
簡単にいうとお金で解決するということになりました。
相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使(民法902条の2)
(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)
第九百二条の二 被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。
民法902条の2は、以前から判例で確立されていたものを明文化したものです。
以前から判例では、遺言で相続分の指定がされていても、相続債権者がその指定を承認しない限り、法定相続分の割合で権利行使ができるとされていました。
これは、被相続人(死亡した人)の財産が相続人ABの二人に相続される場合を想定します。
Aは多額の債務があり、他方Bは多くの財産を持っている場合で、Aが全ての財産を相続する合意されたとします。
そうすると、AB双方が相続していらば、Aからは債権の回収ができなくても、Bからは債権の回収ができたはずです。
それが、すべての財産をAが単独で相続したことにより、Aの債務が被相続人(亡くなった方)の相続財産よりも多くの債務を負っていた場合は回収できなくなってしまいます。
あるいは、Aの債務の額により回収できる債権額が異なってきてしまいます。
これでは、債権者が一方的に不利益を負ってしまい、不都合です。
そこで、判例は債権者を保護するためにこのような判決を出しています。
このように、この条文は確立された条文の明文化をしたものです。
今回の解説は以上です。
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