宅建試験の権利関係で出題される相続分野の民法改正まとめ part9

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宅建試験の権利関係で出題される相続分野の民法改正まとめ part9

こんにちは、編集長Sです。

今回で、相続分野の民法改正についての解説を終わりにします。

ここでは、遺留分侵害請求権の続きと新設された特別の寄与について見ていきます。

余談ですが、民法はこの改正で、1050条までとなりました。

それでは始めます。

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受遺者又は受贈者の負担額(民法1047条)

改正条文です。

(受遺者又は受贈者の負担額)
第1047条
1 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第1042条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
一 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
二 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
三 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
2 第904条、第1043条第2項及び第1045条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。
3 前条第1項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。
4 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
5 裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。

民法1047条の1項は、遺留分侵害額請求権が贈与と遺贈がある場合にどういった順番で受贈者や受遺者が負担するのかについて規定しています。

この規定は、旧規定で民法1033条~1035条に規定されていたものをまとめて規定したものです。

具体的には、相続に近い方から遺留分侵害額請求権を負担することになります。

すなわち、遺贈から先にその後にまだ足りない部分については、受贈者が負担することになります。

2項は、準用規定です。

904条は、対象となる財産を滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなすというものです。

また、民法1043条2項は、条件付権利等に関する規定で、民法1045条は不相当な対価での有償行為などに関する規定です。

これらの規定によって、遺贈や贈与されたものがすでにないといった場合でもきちんと遺留分侵害額を請求できることになります。

3項は、遺留分侵害額請求権を行使した場合に、すでに相続した債務を弁済していた場合には、遺留分侵害請求権を行使した相続人も平等に相続債務を負担するということを規定しています。

4項は、旧民法1037条に規定されていたものです。

5項は、裁判所に遺留分侵害額請求権を請求した場合に、請求を受けたものが直ぐに侵害額を用意することができない場合を考慮して一定の期間内に支払うこととすることができるとしたものです。

遺留分侵害額請求権の期間の制限(民法1048条)

改正条文です。

(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第1048条
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

改正前の民法1042条の規定を引き継いだものです。

いつまでも遺留分侵害額請求権を行使できるというわけではないということです。

遺留分侵害額請求権ができることを知ったときから1年間行使しなかった時、相続開始の時から10年経った時は時効により遺留分侵害額請求権は消滅します。

遺留分の放棄(民法1049条)

改正条文です。

(遺留分の放棄)
第1049条
1 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

相続開始前の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可が必要になります。

これは、相続開始前に被相続人などが、遺留分を放棄させることがあるのでそういうことは家庭裁判所が関与して決めることにしたものです。

また、2項では、遺留分が放棄されたことによって他の共同相続人の遺留分は増加しないということになります。

特別の寄与

改正条文です(新設)。

第1050条
1 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第900条から第902条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。

1項は、相続人以外の親族が無償で被相続人の療養看護をしたことにより、相続財産の維持や増加があった場合に、相続開始後に相続人に対して寄与に応じた額の金銭を請求できるとしています。

これは今回の民法改正以前は、特別の寄与をしものを保護する規定はありませんでした。

それが、今回の改正で特別の寄与をしたものが金銭を請求できるようになりました。

注意すべきは、内縁関係など戸籍上の親族でないものは請求できないという点です。

2項は、特別の寄与した者と相続人との間で、支払われるべき金銭の額について協議がと問わない場合は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができるとしたものです。

ただし、特別の寄与についての協議もいつまでも請求できるわけではありません。

相続の開始を知ったときから6か月又は相続開始から1年という期間制限が設けられています。

これはいつまでも、相続が決まらないといったことを防ぐために規定されています。

3項は、裁判所は、いろいろなことを考慮して特別寄与料を定めるとされています。

4項は、相続財産よりも高額になる特別寄与料が定められることを防止するための規定です。

特別寄与料は相続時の財産から遺贈分を控除した額を超えることができません。

5項は、共同相続人がいる場合に、法定相続分に応じた特別寄与料を払うことを規定しています。

民法の相続分野の改正については以上の通りです。

条文が上がっていないところは、これまでと同じなのでしっかりと理解して、得点できるようにしていきましょう。

今回はこれで終わります。

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